国際民間航空条約(昭和二十八年十月八日条約第二十一号:S28.10.8発効)
最終改正:H18.6.19(H18.6.19外務省告示338)

前文
 国際民間航空の将来の発達は、世界の各国及び各国民の間における友好と理解を創造し、且つ、維持することを大いに助長することができるが、国際民間航空の濫用は、一般的安全に対する脅威となることがあるので、また、
 各国及び各国民の間における摩擦を避け、且つ、世界平和の基礎である各国及び各国民の間における協力を促進することが望ましいので、
 よつて、下名の政府は、国際民間航空が安全に且つ整然と発達するように、また、国際航空運送業務が機会均等主義に基いて確立されて健全且つ経済的に運営されるように、一定の原則及び取極について合意し、
 その目的のためこの条約を締結した。

第一部 航空

第一章 一般原則及び条約の適用

第一条 (主権)
 締約国は、各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有することを承認する。

第二条 (領域)
 この条約の適用上、国の領域とは、その国の主権、宗主権、保護又は委任統治の下にある陸地及びこれに隣接する領水をいう。

第三条 (民間航空機及び国の航空機)
(a) この条約は、民間航空機のみに適用するものとし、国の航空機には適用しない。
(b) 軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。
(c) 締約国の国の航空機は、特別協定その他の方法による許可を受け、且つ、その条件に従うのでなければ、他の国の領域の上空を飛行し、又はその領域に着陸してはならない。
(d) 締約国は、自国の国の航空機に関する規制を設けるに当り、民間航空機の航行の安全について妥当な考慮を払うことを約束する。

第三条の二
(a) 締約国は、各国が飛行中の民間航空機に対して武器の使用に訴えることを差し控えなければならず及び、要撃の場合には、航空機内における人命を脅かし又は航空機の安全を損なつてはならないことを承認する。この規定は、国際連合憲章に定める国の権利及び義務を修正するものと解してはならない。
(b) 締約国は、各国がその主権の行使として、その領域の上空を許可なく飛行する民間航空機に対し又はその領域の上空を飛行する民間航空機であつてこの条約の目的と両立しない目的のために使用されていると結論するに足りる十分な根拠があるものに対し指定空港に着陸するよう要求する権利を有し及びこれらの民間航空機に対しそのような違反を終止させるその他の指示を与えることができることを承認する。このため、締約国は、国際法の関連規則(この条約の関連規定、特に(a)の規定を含む。)に適合する適当な手段をとることができる。各締約国は、民間航空機に対する要撃についての現行の自国の規則を公表することに同意する。
(c) すべての民間航空機は、(b)の規定に基づいて発せられる命令に従う。このため、各締約国は、自国において登録された民間航空機又は自国内に主たる営業所若しくは住所を有する運航者によつて運航される民間航空機が当該命令に従うことを義務とするために必要なすべての規定を自国の国内法令において定める。各締約国は、そのような関係法令の違反について重い制裁を課することができるようにするものとし、自国の法令に従つて自国の権限のある当局に事件を付託する。
(d) 各締約国は、自国において登録された民間航空機又は自国内に主たる営業所若しくは住所を有する運航者によつて運航される民間航空機がこの条約の目的と両立しない目的のために意図的に使用されることを禁止するために適当な措置をとる。この規定は、(a)の規定に影響を及ぼすものではなく、また、(b)及び(c)の規定を害するものではない。

第四条 (民間航空の濫用)
 各締約国は、この条約の目的と両立しない目的のために民間航空を使用しないことに同意する。

第二章 締約国の領域の上空の飛行

第五条 (不定期飛行の権利)
 各締約国は、他の締約国の航空機で定期国際航空業務に従事しないものが、すべて、事前の許可を得ることを必要としないで、且つ、その航空機が上空を飛行する国の着陸要求権に従うことを条件として、その国の領域内への飛行又は同領域の無着陸横断飛行をし、及び運輸以外の目的での着陸をする権利を、この条約の条項を遵守することを条件として有することに同意する。但し、各締約国は、飛行の安全のため、近づき難い地域又は適当な航空施設のない地域の上空の飛行を希望する航空機に対し、所定の航空路を飛行すること又はこのような飛行のために特別の許可を受けることを要求する権利を留保する。
 前記の航空機は、定期国際航空業務としてではなく有償又は貸切で行う旅客、貨物又は郵便物の運送に従事する場合には、第七条の規定に従うことを条件として、旅客、貨物又は郵便物の積込又は積卸をする特権をも有する。但し、積込又は積卸が行われる国は、その望ましいと認める規制、条件又は制限を課する権利を有する。

第六条 (定期航空業務)
 定期国際航空業務は、締約国の特別の許可その他の許可を受け、且つ、その許可の条件に従う場合を除く外、その締約国の領域の上空を通つて又はその領域に乗り入れて行うことができない。

第七条 (国内営業)
 各締約国は、他の締約国の航空機に対し、有償又は貸切で自国の領域内の他の地点に向けて運送される旅客、郵便物及び貨物をその領域内において積み込む許可を与えない権利を有する。各締約国は、他の国又は他の国の航空企業に対して排他的な基礎の上にそのような特権を特に与える取極をしないこと及び他の国からそのような排他的な特権を獲得しないことを約束する。

第八条 (無操縦者航空機)
 操縦者なしで飛行することができる航空機は、締約国の特別の許可を受け、且つ、その許可の条件に従うのでなければ、その締約国の領域の上空を操縦者なしで飛行してはならない。各締約国は、民間航空機に開放されている地域におけるそのような無操縦者航空機の飛行が、民間航空機に及ぼす危険を予防するように管制されることを確保することを約束する。

第九条 (禁止区域)
(a) 各締約国は、軍事上の必要又は公共の安全のため、他の国の航空機が自国の領域内の一定の区域の上空を飛行することを一律に制限し、又は禁止することができる。但し、このことに関しては、当該領域の属する国の航空機で定期国際航空業務に従事するものと他の締約国の航空機で同様の業務に従事するものとの間に差別を設けてはならない。この禁止区域は、航空を不必要に妨害することのない適当な範囲及び位置のものでなければならない。締約国の領域内におけるこの禁止区域の明細及びその後のその変更は、できる限りすみやかに他の締約国及び国際民間航空機関に通知しなければならない。
(b) 各締約国は、また、特別の事態において若しくは緊急の期間又は公共の安全のため、即時、その領域の全部又は一部の上空の飛行を一時的に制限し、又は禁止する権利を留保する。但し、その制限又は禁止は、他のすべての国の航空機に対し、国籍のいかんを問わず適用するものでなければならない。
(c) 各締約国は、その設ける規制に基き、前記の(a)又は(b)に定める区域に入る航空機に対し、その後できる限りすみやかにその領域内の指定空港に着陸するよう要求することができる。

第十条 (税関空港への着陸)
 航空機がこの条約の条項又は特別の許可の条件に基いて締約国の領域の無着陸横断を許されている場合を除く外、締約国の領域に入るすべての航空機は、その国の規制が要求するときは、税関検査その地の検査を受けるため、その国が指定する空港に着陸しなければならない。その航空機は、締約国の領域からの出発に当つては、同様に指定される税関空港から出発しなければならない。指定されるすべての税関空港の詳細は、その国が発表しなければならず、且つ、他のすべての締約国への通知のため、この条約の第二部に基いて設立される国際民間航空機関に伝達しなければならない。

第十一条 (航空に関する規制の適用)
 締約国の法令で、国際航空に従事する航空機の当該締約国の領域への入国若しくはそこからの出国又は同領域内にある間の運航及び航行に関するものは、この条約の規定に従うことを条件として、国籍のいかんを問わずすべての締約国の航空機に適用されるものとし、また、その国の領域への入国若しくはそこからの出国に当り、又は同領域内にある間、当該航空機によつて遵守されなければならない。

第十二条 (航空規則)
 各締約国は、その領域の上空を飛行し、又は同領域内で作動するすべての航空機及び、所在のいかんを問わず、その国籍記号を掲げるすべての航空機が当該領域に施行されている航空機の飛行又は作動に関する規則に従うことを確保する措置を執ることを約束する。各締約国は、これらの点に関する自国の規則をこの条約に基いて随時設定される規則にできる限り一致させることを約束する。公海の上空においては、施行される規則は、この条約に基いて設定されるものでなければならない。各締約国は、適用される規則に違反したすべての者の訴追を確保することを約束する。

第十三条 (入国及び出国に関する規制)
 締約国の法令で、航空機の旅客、乗組員又は貨物の当該締約国の領域への入国又はそこからの出国に関するもの、たとえば、入国、出国、移民、旅券、税関及び検疫に関する規制は、その国の領域への入国若しくはそこからの出国に当り、又は同領域内にある間、その旅客、乗組員若しくは貨物によつて又はそれらの名において遵守されなければならない。

第十四条 (疾病のまん延の防止)
 各締約国は、コレラ、チフス(伝染性)、天然痘、黄熱、ペスト及び締約国が随時決定して指定するその他の伝染病の航空によるまん延を防止する効果的な措置を執ることに同意し、このため、締約国は、航空機に適用される衛生上の措置に関する国際的規制に関係のある機関と常に緊密な協議を行う。この協議は、この問題に関する現存の国際条約で締約国がその当事国であるものの適用を妨げるものではない。

第十五条 (空港の使用料金その他の使用料金)
 締約国内の空港でその国の航空機の使用に公開されているものは、第六十八条の規定に従うことを条件として、他のすべての締約国の航空機に対しても同様に均等の条件の下に公開しなければならない。同様の均等の条件は、各締約国の航空機が、無線及び気象の施設を含むすべての航空保安施設で航空の安全及び迅速化のために公共の用に供されるものを使用する場合にも、適用する。
 締約国が他の締約国の航空機によるそれらの空港及び航空保安施設の使用について課し、又は課することを許す料金は、次の料金より高額であつてはならない。
(a) 定期国際航空業務に従事しない航空機に関しては、類似の運航に従事する自国の同級の航空機が支払う料金
(b) 定期国際航空業務に従事する航空機に関しては、類似の国際航空業務に従事する自国の航空機が支払う料金
 前記の料金は、すべて公表し、且つ、国際民間航空機関に通知しなければならない。但し、関係締約国の申立があつたときは、空港その他の施設の使用について課せられる料金は、理事会の審査を受けなければならず、理事会は、一又は二以上の関係国の考慮を求めるため、これについて報告し、且つ、勧告をしなければならない。いずれの締約国も、他の締約国の航空機又はその航空機上の人若しくは財産が自国の領域の上空の通過、同領域への入国又はそこからの出国をする権利のみに関しては、手数料、使用料その他の課徴金を課してはならない。

第十六条 (航空機の検査)
 各締約国の当局は、不当に遅滞することなく、他の締約国の航空機を着陸又は出発の際に検査し、及びこの条約で定める証明書その他の書類を検閲する権利を有する。

第三章 航空機の国籍

第十七条 (航空機の国籍)
 航空機は、登録を受けた国の国籍を有する。

第十八条 (二重登録)
 航空機は、二以上の国で有効に登録を受けることができない。但し、その登録は、一国から他国に変更することができる。

第十九条 (登録に関する国内法)
 締約国における航空機の登録又は登録の変更は、その国の法令に従つて行われなければならない。

第二十条 (記号の表示)
 国際航空に従事するすべての航空機は、その適正な国籍及び登録の記号を掲げなければならない。

第二十一条 (登録の報告)
 各締約国は、要求があつたときは、他の締約国又は国際民間航空機関に対し、自国で登録された特定の航空機の登録及び所有権に関する情報を提供することを約束する。更に、各締約国は、国際民間航空機関に対し、同機関が定める規則に従い、自国で登録され、且つ、通常国際航空に従事する航空機の所有及び管理に関する入手可能な関係資料を掲げた報告書を提供しなければならない。国際民間航空機関は、他の締約国が要請したときは、このようにして入手した資料をその用に供しなければならない。

第四章 航空を容易にする措置

第二十二条 (手続の簡易化)
 各締約国は、締約国の領域の間における航空機の航行を容易にし、且つ、迅速にするため、並びに特に入国、検疫、税関及び出国に関する法令の施行に当つて航空機、乗組員、旅客及び貨物に対して生ずる不必要な遅延を防止するため、特別の規制の設定その他の方法によつてすべての実行可能な措置を執ることに同意する。

第二十三条 (税関及び出入国の手続)
 各締約国は、実行可能と認める限り、この条約に基いて随時設定され、又は勧告される方式に従い、国際航空に関する税関及び出入国の手続を定めることを約束する。この条約のいかなる規定も、自由空港の設置を妨げるものと解釈してはならない。

第二十四条 (関税)
(a) 他の締約国の領域へ飛行し、同領域から飛行し、又は同領域を横断して飛行する航空機は、その国の税関の規制に従うことを条件として、暫定的に関税の免除を認められる。締約国の航空機が他の締約国の領域に到着した際に積載している燃料、潤滑油、予備部品、正規の装備品及び航空機貯蔵品で、その国の領域から出発する際にも積載するものは、関税、検査手数料又はそれらに類似する国若しくは地方公共団体が課する租税その他の課徴金を免除される。この免除は、荷卸された量又は物品には適用しない。但し、その量又は物品を税関の監視下に置くことを要求するその国の税関の規制に従う場合は、この限りでない。
(b) 国際航空に従事する他の締約国の航空機に取り付けるため、又はその航空機で使用するため締約国の領域に輸入される予備部品及び装備品は、それらの物品を税関の監視及び管理の下に置くことを規定する関係国の規制に従うことを条件として、関税の免除を認められる。

第二十五条 (遭難航空機)
 各締約国は、その領域内で遭難した航空機に対して実行可能と認める救援措置を執り、及び、自国の当局の監督に従うことを条件とし、その航空機の所有者又はその航空機が登録を受けた国の当局が状況により必要とされる救援措置を執ることを許可することを約束する。各締約国は、行くえ不明の航空機の捜索に従事する場合には、この条約に基いて随時勧告される共同措置に協力する。

第二十六条 (事故の調査)
 締約国の航空機が他の締約国の領域で事故を起した場合において、その事故が死亡若しくは重傷を伴うとき、又は航空機若しくは航空施設の重大な技術的欠陥を示すときは、その事故が起つた国は、自国の法令の許す限り国際民間航空機関の勧告する手続に従つて、事故の事情の調査を行うものとする。その航空機が登録を受けた国は、調査に立ち会う者を任命する機会を与えられなければならず、調査を行う国は、その国に対し、その事項に関する報告及び所見を通知しなければならない。

第二十七条(特許権に基いて請求される差押の免除)
(a) 国際航空に従事している限り、締約国の航空機が許可を受けて他の締約国の領域へ入る場合又は許可を受けてその領域の着陸を伴う若しくは無着陸の横断をする場合には、その国若しくはその国にある人又はそれらの代理人は、航空機の構造、機械装置、部品、附属品又は運航が、航空機の入つた領域の属する国で正当に許与され、又は登録された特許、意匠又はひな形の侵害であるという理由で、航空機の差押若しくは抑留、航空機の所有者若しくは運営者に対する請求又は航空機に対するその他の干渉を行つてはならない。この場合において、航空機の差押又は抑留の免除に関する担保の供与は、その航空機が入つた国では、いかなる場合にも要求されないものとする。
(b) 本条(a)の規定は、また、締約国の航空機のための予備部品及び予備装備品の他の締約国の領域内における保管並びにこれらを締約国の航空機の他の締約国の領域内における修理のため使用し、及び装置する権利について適用する。但し、このようにして保管されるいかなる特許部品又は特許装備品も、航空機が入国する締約国の国内で販売し、若しくは分配し、又はその締約国から商業上の目的で輸出してはならない。
(c) 本条の利益は、この条約の当事国で、(1)工業所有権の保護に関する国際条約及びその改正条約の当事国であるもの又は(2)この条約の他の当事国が国民がした発明を承認し、且つ、それに適当な保護を与える特許法を制定したもののみに適用する。

第二十八条 (航空施設及び標準様式)
 各締約国は、実行可能と認める限り、次のことを約束する。
(a) この条約に基いて随時勧告され、又は設定される標準及び方式に従い、国際航空を容易にするためその領域内に空港、無線施設、気象施設その他の航空施設を設定すること。
(b) この条約に基いて隋時勧告され、又は設定される通信手続、符号、記号、信号及び照明の適当な標準様式並びにその他の運航上の方式及び規則を採用し、及び実施すること。
(c) この条約に基いて随時勧告され、又は設定される標準に従う航空地図及び航空図の刊行を確保するための国際的措置に協力すること。

第五章 航空機について備えるべき要件

第二十九条 (航空機が携行する書類)
 国際航空に従事する締約国のすべての航空機は、この条約で定める要件に合致する次の書類を携行しなければならない。
(a) 登録証明書
(b) 耐空証明書
(c) 各乗組員の適当な免状
(d) 航空日誌
(e) 無線機を装備するときは、航空機局免許状
(f) 旅客を運送するときは、その氏名、乗込地及び目的地の表
(g) 貨物を運送するときは、積荷目録及び貨物の細目申告書

第三十条 (航空機の無線装備)
(a) 各締約国の航空機は、登録を受けた国の当局から無線送信機を装備し、且つ、運用するための免許状の発給を受けたときにのみ、他の締約国の領域内で又はその領域の上空でその送信機を携行することができる。領域の上空を飛行される締約国の領域における無線送信機の使用は、その国が設ける規制に従わなければならない。
(b) 無線送信機は、航空機が登録を受けた国の当局が発給したそのための特別の免状を所持する航空機乗組員に限つて使用することができる。

第三十一条 (耐空証明書)
 国際航空に従事するすべての航空機は、登録を受けた国が発給し、又は有効と認めた耐空証明書を備えつけなければならない。

第三十二条 (航空従事者の免状)
(a) 国際航空に従事するすべての航空機の操縦者その他の運航乗組員は、その航空機が登録を受けた国が発給し、又は有効と認めた技能証明書及び免状を所持しなければならない。
(b) 各締約国は、自国の領域の上空の飛行に関しては、自国民に対して他の締約国が与えた技能証明書及び免状を認めることを拒否する権利を留保する。

第三十三条 (証明書及び免状の承認)
 航空機が登録を受けた国が発給し、又は有効と認めた耐空証明書、技能証明書及び免状は、その証明書又は免状を発給し、又は有効と認めた要件がこの条約に従つて随時設定される最低標準と同等又はそれ以上のものである限り、他の締約国も有効と認めなければならない。

第三十四条 (航空日誌)
 国際航空に従事するすべての航空機については、この条約に従つて随時定められる形式で航空機、その乗組員及び各飛行の細目を記入した航空日誌を保持しなければならない。

第三十五条 (貨物の制限)
(a) 軍需品又は軍用器材は、締約国の許可を受けた場合を除く外、国際航空に従事する航空機でその国の領域内又は領域の上空を運送してはならない。各国は、統一を期するため、国際民間航空機関が随時行う勧告に対して妥当な考慮を払つた上、本条にいう軍需品又は軍用器材とは何かを規則によつて決定しなければならない。
(b) 各締約国は、公の秩序及び安全のため、(a)に掲げる物品以外の物品をその領域内又は領域の上空を運送することを制限し、又は禁止する権利を留保する。但し、この点については、国際航空に従事する自国の航空機と他の締約国の同様の航空機との間に差別を設けてはならず、また、航空機の運航若しくは航行又は乗組員若しくは旅客の安全のため必要な装置の携行及び航空機上におけるその使用を妨げる制限を課してはならない。

第三十六条 (写真機)
 各締約国は、その領域の上空にある航空機において写真機を使用することを禁止し、又は制限することができる。

第六章 国際標準及び勧告方式

第三十七条 (国際の標準及び手続の採択)
 各締約国は、航空機、航空従事者、航空路及び附属業務に関する規則、標準、手続及び組織の実行可能な最高度の統一を、その統一が航空を容易にし、旦つ、改善するすべての事項について確保することに協力することを約束する。
 このため、国際民間航空機関は、次の事項に関する国際標準並びに勧告される方式及び手続を必要に応じて随時採択し、及び改正する。
(a) 通信組織及び航空保安施設(地上標識を含む。)
(b) 空港及び着陸場の性質
(c) 航空規則及び航空交通管制方式
(d) 運航関係及び整備関係の航空従事者の免許
(e) 航空機の耐空性
(f) 航空機の登録及び識別
(g) 気象情報の収集及び交換
(h) 航空日誌
(i) 航空地図及び航空図
(j) 税関及び出入国の手続
(k) 遭難航空機及び事故の調査
並びに航空の安全、正確及び能率に関係のあるその他の事項で随時適当と認めるもの

第三十八条 (国際の標準及び手続からの背離)
 すべての点について国際の標準若しくは手続に従うこと若しくは国際の標準若しくは手続の改正後自国の規制若しくは方式をそれに完全に一致させることを不可能と認める国又は国際標準によつて設定された規則若しくは方式と特定の点において異なる規制若しくは方式を採用することを必要と認める国は、自国の方式と国際標準によつて設定された方式との相違を直ちに国際民間航空機関に通告しなければならない。国際標準の改正があつた場合に自国の規制又は方式に適当な改正を加えない国は、国際標準の改正の採択の日から六十日以内に理事会に通告し、又は自国が執ろうとする措置を明示しなければならない。この場合には、理事会は、国際標準の一又は二以上の特異点とこれに対応するその国の国内方式との相違を直ちに他のすべての国に通告しなければならない。

第三十九条 (証明書及び免状の裏書)
(a) 耐空性又は性能の国際標準が存在する航空機又はその部品で、その証明の時に何らかの点でその標準に合致しなかつたものは、合致しなかつた点の完全な明細がその耐空証明書に裏書され、又はこれに添付されなければならない。
(b) 免状を所持する者で、その所持する免状又は証明書の等級に関する国際標準に定める条件を完全に満たしていないものは、その条件を満たさない点の完全な明細がその免状に裏書され、又はこれに添付されなければならない。

第四十条 (裏書された証明書及び免状の効力)
 前記のように裏書された証明書又は免状を有する航空機又は航空従事者は、その入る領域の属する一又は二以上の国の許可を受けた場合を除く外、国際航空に参加してはならない。その航空機又は証明を受けた航空機部品の最初に証明を受けた国以外の国における登録又は使用は、その航空機又は部品を輸入する国が任意に定める。

第四十一条  (耐空性の現行標準の承認)
 本章の規定は、航空機及び航空機装備品で、それらの耐空性の国際標準の採択の日の後三年以内にその原型式が当該国の当局に証明のため提出される型式のものには、適用しない。

第四十二条 (航空従事者の技能の現行標準の承認)
 本章の規定は、航空従事者で、その資格証明の国際標準の最初の採択の日の後一年以内に初めて免状の発給を受けるものには、適用しない。但し、この標準の採択の日の後五年を経過してなお有効である免状を有するすベての航空従事者には、いかなる場合にも適用する。

第二部 国際民間航空機関

第七章 機関

第四十三条 (名称及び構成)
 この条約により、国際民間航空機関という機関を組織する。この機関は、総会、理事会その他の必要な機関からなる。

第四十四条 (目的)
 この機関の目的は、次のことのため、国際航空の原則及び技術を発達させ、並びに国際航空運送の計画及び発達を助長することである。
(a) 世界を通じて国際民間航空の安全な且つ整然たる発展を確保すること。
(b) 平和的目的のために航空機の設計及び運航の技術を奨励すること。
(c) 国際民間航空のための航空路、空港及び航空保安施設の発達を奨励すること。
(d) 安全な、正確な、能率的な、且つ、経済的な航空運送に対する世界の諸国民の要求に応ずること。
(e) 不合理な競争によつて生ずる経済的浪費を防止すること。
(f) 締約国の権利が充分に尊重されること及びすべての締約国が国際航空企業を運営する公正な機会をもつことを確保すること。
(g) 締約国間の差別待遇を避けること。
(h) 国際航空における飛行の安全を増進すること。
(i) 国際民間航空のすべての部面の発達を全般的に促進すること。

第四十五条 (恒久的所在地)
 この機関の恒久的所在地は、千九百四十四年十二月七日にシカゴで署名された国際民間航空中間協定によつて設立された臨時国際民間航空機関の中間総会の最終会合で決定される場所とする。その所在地は、理事会の決定により一時的に他の場所に、また、総会の決定により一時的でなく他の場所に移すことができる。その総会の決定は、総会が定める票数により行われるものとし、総会が定める票数は、締約国の総数の五分の三未満であつてはならない。

第四十六条 (総会の第一回会合)
 総会の第一回会合は、前記の臨時機関の中間理事会が決定する時に、及びその決定する場所で会合するように、この条約の効力発生の後直ちに中間理事会が招集する。

第四十七条 (法律上の行為能力)
 この機関は、各締約国の領域内で、任務の遂行に必要な法律上の行為能力を享有する。この機関は、関係国の憲法及び法律と両立する限り、完全な法人格を付与される。

第八章 総会

第四十八条 (総会の会合及び表決)
(a) 総会は、少くとも三年に一回会合するものとし、理事会が適当な時及び場所に招集する。臨時総会は、理事会の招集又は締約国の総数の五分の一以上からの事務局長にあてた要請があつたときは、いつでも開催することができる。
(b) すベての締約国は、総会の会合に代表者を出す平等な権利を有し、各締約国は、一個の投票権を有する。締約国を代表する代表は、技術顧問の援助を受けることができる。技術顧問は、会合に参加することができるが、投票権を有しない。
(c) 総会の会合の定足数を構成するためには、締約国の過半数を必要とする。総会の決定は、この条約に別段の定がない限り、投票の過半数によつて行われる。

第四十九条 (総会の権限及び任務)
 総会の権限及び任務は、次のとおりとする。
(a) 会合ごとに議長その他の役員を選挙すること。
(b) 第九章の規定に従い、理事会に代表者を出す締約国を選挙すること。
(c) 理事会の報告を審査して適当な措置を執り、且つ、理事会が総会に付託した事項について決定をすること。
(d) その手続規則を決定し、且つ、必要又は望ましいと認める補助的な委員会を設立すること。
(e) 第十二章の規定に従い、この機関の年次予算を表決し、且つ、この機関の財政上の措置を決定すること。
(f) この機関の支出を検査し、且つ、この機関の決算報告を承認すること。
(g) この活動範囲内の事項を理事会、補助的な委員会その他の機関に任意に付託すること。
(h) この機関の任務の遂行に必要な又は望ましい権限を理事会に委任し、及びその権限の委任をいつでも取り消し、又は修正すること。
(i) 第十三章の関係規定を実施すること。
(j) この条約の規定の修正又は改正のための提案を審議し、及び、その提案を承認した場合には、第二十一章の規定に従つてこれを締約国に勧告すること。
(k) この機関の活動範囲内の事項で特に理事会の任務とされていないものを処理すること。

第九章 理事会

第五十条 (理事会の構成及び選挙)
(a) 理事会は、総会に対して責任を負う常設機関とする。理事会は、総会が選挙する三十六の締約国からなる。選挙は、総会の第一回会合で行い、その後は、三年ごとに行う。このようにして選挙された理事会の構成員は、次の選挙まで在任する。
(b) 理事会の構成員の選挙に当つて、総会は、(1)航空運送において最も重要な国、(2)(1)又は(3)に含まれない国で国際民間航空のための施設の設置に最大の貢献をするもの及び(3)(1)又は(2)に含まれない国で、その国を指名すれば世界のすべての主要な地理的地域が理事会に確実に代表されることとなるようなものが、適当に代表されるようにしなければならない。理事会の空席は、総会ができる限りすみやかに補充しなければならない。このようにして理事会に選挙された締約国は、前任者の残任期間中在任する。
(c) 理事会を構成する締約国の代表者は、国際航空業務の運営に積極的に参与し、又はその業務に財政的に関係してはならない。

第五十一条 (理事会の議長)
 理事会は、その議長を三年の任期で選挙する。議長は、再選されることができる。議長は、投票権を有しない。理事会は、その構成員の中から一人又は二人以上の副議長を選挙する。副議長は、議長代理となるときも、投票権を保有する。議長は、理事会の構成員の代表者の中から選定されることを要しないが、代表者が議長に選挙された場合には、その議席は、空席とみなし、その代表者が代表する国により補充される。議長の任務は、次のとおりとする。
(a) 理事会、航空運送委員会及び航空委員会の会合を招集すること。
(b) 理事会の代表者となること。
(c) 理事会が指定する任務を理事会に代つて遂行すること。

第五十二条 (理事会における表決)
 理事会の決定は、その構成員の過半数の承認を必要とする。理事会は、特定の事項に関する権限をその構成員からなる委員会に委任することができる。理事会の委員会の決定については、利害関係のある締約国が理事会に異議を申し立てることができる。

第五十三条 (投票権を伴わない参加)
 締約国は、自国の利害に特に影響する問題について理事会及びその委員会が行う審議に投票権なしで参加することができる。理事会の構成員は、自国が当事者である紛争について理事会が行う審議においては、投票権を有しない。

第五十四条 (理事会の義務的任務)
 理事会は、次のことを行わなければならない。
(a) 総会に年次報告を提出すること。
(b) 総会の指令を遂行し、並びにこの条約で課せられる任務及び義務を履行すること。
(c) その組織及び手続規則を決定すること。
(d) 航空運送委員会を設置し、及びその任務を定めること。その委員会の委員は、理事会の構成員の代表者の中から選ばれ、その委員会は、理事会に対して責任を負うものとする。
(e) 第十章の規定に従つて航空委員会を設置すること。
(f) 第十二章及び第十五章の規定に従つてこの機関の会計を管理すること。
(g) 理事会の議長の報酬を決定すること。
(h) 第十一章の規定に従い、事務局長と呼ばれる首席行政官を任命し、及びその他の必要な職員の任命に関する規定を作成すること。
(i) 航空の進歩及び国際航空業務の運営に関する情報を要請し、収集し、審査し、及び公表すること。その情報には、運営の費用に関する情報及び公の資金から航空企業に支払われた補助金の明細に関する情報を含む。
(j) この条約の違反及び理事会の勧告又は決定の不履行を締約国に報告すること。
(k) この条約の違反の通告の後相当な期間内に締約国が適当な措置を執らなかつた場合には、その違反を総会に報告すること。
(l) この条約の第六章の規定に従つて国際標準及び勧告方式を採択し、便宜上、それらをこの条約の附属書とし、且つ、執つた措置をすべての締約国に通告すること。
(m) 附属書の改正についての航空委員会の勧告を審議し、且つ、第二十章の規定に従つて措置を執ること。
(n) この条約に関して締約国が付託する問題を審議すること。

第五十五条 (理事会の任意的任務)
 理事会は、次のことを行うことができる。
(a) 適当であり、且つ、経験上望ましいと認められる場合には、地域的基礎その他の基礎に基く航空運送小委員会を創設し、及び理事会がこの条約の目的の遂行を容易にするため直接又は間接に交渉することができる国又は航空企業の集団を定めること。
(b) この条約で定める任務に追加される任務を航空委員会に委任し、及びこの権限の委任をいつでも取り消し、又は修正すること。
(c) 国際的重要性を有する航空運送及び航空のすべての部面について調査を行い、その調査の結果を締約国に通知し、並びに航空運送及び航空上の問題に関する締約国間の情報の交換を容易にすること。
(d) 国際幹線航空業務の国際的の所有及び運営を含む国際航空運送の組織及び運営に関する問題を研究し、並びにこれに関する計画を総会に提出すること。
(e) 避けることができる障害が国際航空の発達を妨げていると認められる事態を締約国の要請に基いて調査し、その調査の後、理事会が望ましいと認める報告を発表すること。

第十章 航空委員会

第五十六条 (委員の指名及び任命)
 航空委員会は、締約国が指名する者の中から理事会が任命する十九人の委員からなる。締約国が指名する者は、航空の理論及び実際について適当な資格及び経験を有する者でなければならない。理事会は、すべての締約国に対して被指名者名簿の提出を要請する。航空委員会の委員長は、理事会が任命する。

第五十七条 (委員会の任務)
 航空委員会は、次のことを行わなければならない。
(a) この条約の附属書の修正を審議し、及びその採択を理事会に勧告すること。
(b) 望ましいと認める場合には、いかなる締約国も代表者を出すことができる専門部会を設置すること。
(c) 航空の進歩に必要且つ有用であると認めるすべての情報の収集及び締約国への通知に関して理事会に助言すること。

第十一章 職員

第五十八条 (職員の任命)
 総会が定める規則及びこの条約の規定に従うことを条件として、理事会は、事務局長その他のこの機関の職員の任命及び任期終了の方法、訓練並びに俸給、諸手当及び勤務条件を決定しなければならず、また、締約国の国民を雇用し、又はその役務を利用することができる。

第五十九条 (職員の国際的性質)
 理事会の議長、事務局長その他の職員は、その責任の遂行に関し、この機関外のいかなる当局からも指示を求め、又は受けてはならない。各締約国は、職員の責任の国際的性質を充分に尊重すること及び自国民がその責任を遂行するに当つてこれを左右しようとしないことを約束する。

第六十条 (職員の免除及び特権)
 各締約国は、その憲法上の手続に基いて可能である限り、理事会の議長、事務局長その他のこの機関の職員に対し、他の公的国際機関の相当職員に付与されている免除及び特権を付与することを約束する。国際的文官の免除及び特権に関する一般的国際協定が締結された場合には、議長、事務局長その他のこの機関の職員に付与される免除及び特権は、その一般的国際協定に基いて付与される免除及び特権でなければならない。

第十二章 会計

第六十一条 (予算及び経費の割当)
 理事会は、年次予算、年次決算書及びすべての収支に関する概算を総会に提出する。総会は、適当と認める修正を加えて予算を表決し、及び、第十五章に基く同意国への割当金を除く外、この機関の経費を総会が随時決定する基礎に基いて締約国間に割り当てる。

第六十二条 (投票権の停止)
 総会は、この機関に対する財政上の義務を相当な期間内に履行しない締約国の総会及び理事会における投票権を停止することができる。

第六十三条 (代表団その他の代表者の経費)
 各締約国は、総会への自国の代表団の経費並びに理事会勤務を命じた者及びこの機関の補助的な委員会に対する被指名者又は代表者の報酬、旅費その他の経費を負担しなければならない。

第十三章 他の国際取極

第六十四条 (安全保障取極)
 この機関は、その権限内にある航空問題で世界の安全保障に直接に影響を及ばすものに関し、総会の表決により、世界の諸国が平和を維持するために設立する一般的な機構と適当な取極を締結することができる。

第六十五条 (他の国際団体との取極)
 理事会は、共通の業務の維持及び職員に関する共通の取極のため、この機関に代つて他の国際団体と協定を締結し、並びに、総会の承認を得て、この機関の事業を容易にするようなその他の取極を締結することができる。

第六十六条 (他の協定に関する任務)
(a) この機関は、また、千九百四十四年十二月七日にシカゴで作成された国際航空業務通過協定及び国際航空運送協定によつて課せられた任務をこれらの協定に定める条項及び条件に従つて遂行する。
(b) 総会及び理事会の構成員で、千九百四十四年十二月七日にシカゴで作成された国際航空業務通過協定又は国際航空運送協定を受諾していないものは、関係協定の規定に基いて総会又は理事会に付託される問題については、投票権を有しない。

第三部 国際航空運送

第十四章 情報及び報告

第六十七条 (理事会への報告の提出)
 各締約国は、その国際航空企業が、運輸報告、支出統計並びに会計報告書で特にすべての収入及びその源泉を示すものを理事会の定める要件に従つて理事会に提出することを約束する。

第十五章 空港その他の航空施設

第六十八条 (航空路及び空港の指定)
 各締約国は、この条約の規定に従うことを条件として、国際航空業務が自国の領域内で飛行すべき航空路及びその業務が使用する空港を指定することができる。

第六十九条 (航空施設の改善)
 理事会は、締約国の空港その他の航空施設(無線及び気象の施設を含む。)が現存の又は計画中の国際航空業務の安全な、正確な、能率的な、且つ、経済的な運営のために合理的に判断して適当でないと認める場合には、その事態を救済する方法を発見するため、直接関係国及び影響を受けるその他の国と協議しなければならず、また、この目的のために勧告をすることができる。締約国は、この勧告を実行しない場合にも、この条約の違反の責を負わない。

第七十条 (航空施設の費用の負担) 
 締約国は、第六十九条に規定する事情の下にあるときは、前記の勧告を実施するために理事会と取極を締結することができる。その国は、その取極に伴うすべての費用を負担することができる。その国がこれを負担しない場合には、理事会は、その国の要請に基いて費用の全部又は一部を負担することに同意することができる。

第七十一条 (理事会による施設の設置及び維持)
 理事会は、締約国が要請する場合には、空港その他の航空施設(無線及び気象の施設を含む。)の一部又は全部で、その領域内で他の締約国の国際航空業務の安全な、正確な、能率的な、且つ、経済的な運営のために必要とされるものの設置、配員、維持及び管理をすることに同意し、並びに設置した施設の使用について公正且つ合理的な料金を定めることができる。

第七十二条 (土地の取得又は使用)
 締約国の要請に基いて理事会が費用の全部又は一部を負担する施設のために土地が必要とされる場合には、その国は、希望するときは所有権を保有して、土地そのものを提供し、又は理事会が公正且つ合理的な条件で、且つ、当該国の法律に従つて土地を使用することを容易にしなければならない。

第七十三条 (資金の支出及び割当)
 理事会は、総会が第十二章に基いて理事会の使用に供する資金の範囲内で、本章の目的のためこの機関の一般資金から経常的支出をすることができる。理事会は、本章の目的のために必要な設備資金を、相当な期間についてあらかじめ協定した割合で、その施設を利用する航空企業が属する締約国でこれに同意するものに割り当てなければならない。理事会は、また、必要とされる運転資金を同意する国に割り当てることができる。

第七十四条 (技術的援助及び収入の利用)
 理事会が締約国の要請に基いて資金を前払し、又は空港その他の施設の全部若しくは一部を設置する場合には、その取極は、その国の同意を得て、その空港その他の施設の監督及び運営についての技術的援助に関し、並びにその空港その他の施設の運営費並びに利子及び割賦償還金がその空港その他の施設の運営によつて生ずる収入から支払われることに関して定めることができる。

第七十五条 (理事会からの施設の引継)
 締約国は、いつでも、状況により合理的であると理事会が認める額をこれに支払うことにより、第七十条に基いて負担した債務を履行し、並びに理事会が第七十一条及び第七十二条の規定に従つて自国の領域内に設置した空港その他の施設を引き継ぐことができる。締約国は、理事会が定める額が不当であると認める場合には、理事会の決定について総会に対し異議を申し立てることができる。総会は、理事会の決定を確認し、又は修正することができる。

第七十六条 (資金の返済)
 理事会が第七十五条に基く弁済並びに第七十四条に基く利子及び割賦償還金の領収によつて得た資金は、第七十三条に基いて締約国が最初に資金を前払している場合には、最初に出資を割り当てられた国に対し、理事会が決定したその割当額に比例して返済しなければならない。 第十六章 共同運営組織及び共同計算業務

第七十七条 (共同運営組織の許可)
 この条約のいかなる規定も、二以上の締約国が共同の航空運送運営組織又は国際運営機関を組織し、及びいずれかの路線又は地域における航空業務を共同計算にすることを妨げるものではない。但し、その組織又は機関及びその共同計算業務は、協定の理事会への登録に関する規定を含むこの条約のすべての規定に従わなければならない。理事会は、国際運営機関が運営する航空機に対して航空機の国籍に関するこの条約の規定をいかなる方法で適用するかを決定しなければならない。

第七十八条 (理事会の任務)
 理事会は、いずれかの路線又は地域における航空業務を運営するために共同組織を作ることを関係締約国に提議することができる。

第七十九条 (運営組織への参加)
 国は、その政府を通じて、又はその政府が指定する一若しくは二以上の航空会社を通じて、共同運営組織又は共同計算取極に参加することができる。それらの航空会社は、もつぱら関係国のみの裁量により、国有、一部国有又は私有のいずれのものともすることができる。

第四部 最終規定

第十七章 他の航空協定及び航空取極

第八十条 (パリ条約及びハバナ条約)
 各締約国は、千九百十九年十月十三日にパリで署名された航空法規に関する条約又は千九百二十八年二月二十日にハバナで署名された商業航空に関する条約のいずれかの当事国である場合には、その廃棄をこの条約の効力発生の後直ちに通告することを約束する。この条約は、締約国の間においては、前記のパリ条約及びハバナ条約に代るものとする。

第八十一条 (現在協定の登録)
 この条約の効力発生の際、締約国と他の国との間又は締約国の航空企業と他の国若しくは他の国の航空企業との間に存在するすべての航空協定は、直に理事会に登録しなければならない。

第八十二条 (両立しない取極の廃止)
 締約国は、この条約がこの条約の条項と両立しない相互間のすべての義務及び了解を廃止するものであることを承認し、且つ、そのような義務及び了解を成立させないことを約束する。この機関の加盟国となる前にこの条約の条項と両立しない義務を非締約国に対し、又は締約国若しくは非締約国の国民に対して約束した締約国は、その義務を免かれる措置を直ちに執らなければならない。締約国の航空企業がこのような両立しない義務を負担している場合には、この企業の国籍の属する国は、直ちにこの義務を終止することを確保するために最善の努力をし、且つ、いかなる場合にも、この義務を終止させる措置がこの条約の効力発生の後適法に可能となつたときは、直ちにこの措置を執らなければならない。

第八十三条 (新たな取極の登録)
 締約国は、前条の規定に従うことを条件として、この条約の規定に反しない取極を結ぶことができる。この取極は、直ちに理事会に登録しなければならず、理事会は、できる限りすみやかにこれを公表しなければならない。

第八十三条の二 (一定の任務及び義務の移転)
(a) 締約国において登録された航空槻が他の締約国内に主たる営業所(主たる営業所を有しないときは、住所)を有する運航者によつてリース、チャーター若しくは引継運航又はこれらに類する手配の取決めに従つて運航される場合には、第十二条、第三十条、第三十一条及び第三十二条(a)の規定にかかわらず、登録国は、当該他の締約国との協定により、これらの規定に基づく当該航空機に係る登録国の任務及び義務の全部又は一部を当該他の締約国に移転することができる。登録国は、移転された任務及び義務についての責任を解除される。
(b) 移転は、当該移転について定める国家間の協定が第八十三条の規定に従つて理事会に登録され及び公表されるまで他の締約国について、又は当該協定のいずれかの当事国が他の関係締約国の当局に対して当該協定の存在及び適用範囲を直接通告するまで当該他の関係締約国について、効力を生じない。
(c) (a)及び(b)の規定は、第七十七条の規定の適用を受ける場合についても、適用する。

第十八章 紛争及び違約

第八十四条 (紛争の解決)
 この条約及び附属書の解釈又は適用に関する二以上の締約国間の意見の相違が交渉によつて解決されない場合には、その意見の相違は、それに関係のある国の申請に基き、理事会が解決する。理事会の構成員は、自国が当事者である紛争について理事会が行う審議においては、投票権を有しない。締約国は第八十五条に従うことを条件として、理事会の決定について、他の紛争当事者と協定する特別仲裁裁判所又は常設国際司法裁判所に提訴することができる。この提訴は、理事会の決定の通告の受領の日から六十日以内に理事会に通告しなければならない。

第八十五条 (仲裁手続)
 紛争当事者たるいずれかの締約国でその紛争に関する理事会の決定について提訴されているものが常設国際司法裁判所規程を受諾しておらず、且つ、紛争当事者たる締約国が仲裁裁判所の選定について合意することができない場合には、紛争当事者たる各締約国は、一人の仲裁委員を指名しなければならない。これらの仲裁委員は、一人の審判委員を指名するものとする。その紛争の当事者たるいずれかの締約国が提訴の日から三箇月の期間内に仲裁委員を指名しなかつた場合には、仲裁委員は、理事会が備えている有資格者の現在員名簿の中から、理事会の議長がその国に代つて指名しなければならない。仲裁委員が審判委員について三十日以内に合意することができなかつた場合には、理事会の議長は、前記の名簿の中から審判委員を指名しなければならない。次に、仲裁委員及び審判委員は、仲裁裁判所を共同で構成しなければならない。本条又は前条に基いて設置される仲裁裁判所は、その手続を定め、且つ、多数決によつて決定を行わなければならない。但し、理事会は、著しい遅延があると認める場合には、手続問題を決定することができる。

第八十六条 (提訴)
 理事会が別に定める場合を除く外、国際航空企業がこの条約の規定に従つて運営されているかどうかについての理事会の決定は、提訴に基いて破棄されない限り、引き続き有効とする。その他の事項については、理事会の決定は、これについて提訴された場合には、その提訴が決定されるまでの間停止しなければならない。常設国際司法裁判所及び仲裁裁判所の決定は、最終的とし、且つ、拘束力を有する。

第八十七条 (航空企業の違反に対する制裁)
 各締約国は、自国の領域上の空間を通過する締約国の航空企業が前条に従つて行われた最終的決定に違反していると理事会が決定した場合には、その航空企業の運営を許可しないことを約束する。

第八十八条 (国の違反に対する制裁)
 総会は、本章の規定に基いて違約国と認められた締約国の総会及び理事会における投票権を停止しなければならない。

第十九章 戦争

第八十九条 (戦争及び緊急状態)
 この条約の規定は、戦争の場合には、交戦国であると中立国であるとを問わず、関係締約国の行動の自由に影響を及ぼすものではない。同一の原則は、国家緊急事態を宣言してその事実を理事会に通告した締約国の場合にも、適用する。

第二十章 附属書

第九十条 (附属書の採択及び改正)
(a) 第五十四条(1)に掲げる理事会による附属書の採択は、そのために招集された会合における理事会の三分の二の投票を必要とし、次に、理事会が各締約国に送付しなければならない。その附属書又は附属書の改正は、各締約国への送付の日の後三箇月以内に、又は理事会が定めるそれ以上の期間の終了の時に、効力を生ずる。但し、締約国の過半数がこの期間内にその不承認を理事会に届け出た場合は、この限りでない。
(b) 理事会は、附属書又はその改正の効力の発生をすべての締約国に直ちに通告しなければならない。

第二十一章 批准、加入、改正及び廃棄

第九十一条 (条約の批准)
(a) この条約は、署名国によつて批准されなければならない。批准書は、アメリカ合衆国政府の記録に寄託する。同政府は、その寄託の日を各署名国及び各加入国に通告する。
(b) この条約は、二十六国がこれを批准し、又はこれに加入したときは、二十六番目の文書の寄託の日の後三十日目にそれらの国の間で効力を生ずる。この条約は、その後批准する各国については、その批准書の寄託の日の後三十日目に効力を生ずる。
(c) アメリカ合衆国政府は、この条約が効力を生じた日を各署名国及び各加入国の政府に通告するものとする。

第九十二条 (条約への加入)
(a) この条約は、連合国及びこれらと連合している国並びに今次世界戦争の間中立であつた国の加入のために開放される。
(b) 加入は、アメリカ合衆国政府にあてた通告によつて行い、且つ、アメリカ合衆国政府が通告を受領した日から三十日目に効力を生ずる。同政府は、すべての締約国にその旨を通告する。

第九十三条 (その他の国の加入承認)
 第九十一条及び第九十二条(a)に規定する国以外の国は、世界の諸国が平和を維持するために設立する一般的な国際機構の承認を得ることを条件として、総会の五分の四の投票により、且つ、総会が定める条件で、この条約に加入することを承認される。但し、各場合において、承認を求める国によつて今次戦争の間に侵略され、又は攻撃された国の同意を必要とする。

第九十四条 (条約の改正)
(a) この条約の改正案は、総会の三分の二の投票によつて承認されなければならず、また、総会が定める数の締約国が批准した時に、その改正を批准した国について効力を生ずる。総会が定める数は、締約国の総数の三分の二未満であつてはならない。
(b) 総会は、前記の改正の性質上正当と認める場合には、採択を勧告する決議において、改正の効力発生の後所定の期間内に批准しなかつた国が直ちにこの機関の加盟国及びこの条約の当事国でなくなることを規定することができる。

第九十五条 (条約の廃棄)
(a) 締約国は、この条約の効力発生の後三年を経過したときは、アメリカ合衆国政府にあてた通告により、この条約の廃棄の通告をすることができる。同政府は、直ちに各締約国にその旨を通報する。
(b) 廃棄は、その通告の受領の日から一年で効力を生じ、且つ、廃棄を行つた国についてのみ有効とする。

第二十二章 定義

第九十六条
 この条約の適用上、
(a) 「航空業務」とは、旅客、郵便物又は貨物の公衆用の運送のために航空機で行う定期航空業務をいう。
(b) 「国際航空業務」とは、二以上の国の領域上の空間にわたつて行う航空業務をいう。
(c) 「航空企業」とは、国際航空業務を提供し、又は運営する航空運送企業をいう。
(d) 「運輸以外の目的での着陸」とは、旅客、貨物又は郵便物の積込又は積卸以外の目的で着陸することをいう。

条約の署名
 以上の証拠として、下名の全権委員は、正当に委任を受け、それぞれの政府のために、その署名に対応して掲げる日にこの条約に署名する。
 千九百四十四年十二月七日にシカゴで、英語により作成した。英語、フランス語及びスペイン語で作成する本文一通は、各語ともにひとしく正文とし、ワシントンで署名のため開放される。両本文は、アメリカ合衆国政府の記録に寄託し、認証謄本は、同政府がこの条約に署名し、又は加入するすべての国の政府に送付する。

−以下署名略−

*昭和二十八年十月八日外務省告示第百四号*
 わが国は、本年九月八日にアメリカ合衆国政府に対し、国際民間航空条約への加入を通告したので、同条約は、本年十月八日にわが国に関して効力を生じた。(本年九月二十二日付の国際民間航空機関事務局長から外務大臣あての書簡)

改正履歴

1.昭和三十二年一月十七日条約第一号(国際民間航空条約の改正に関する議定書)
発効日:S31.12.12

2.昭和三十三年十一月八日条約第十号(国際民間航空条約の改正に関する議定書)
発効日:S33.5.16

3昭和三十七年八月九日条約第七号(国際民間航空条約の改正に関する議定書) 発効日:S37.7.17

4.昭和四十八年四月十九日条約第四号(国際民間航空条約の改正に関する千九百七十一年三月十二日にニュー・ヨークで署名された議定書)
発効日:S48.1.16

5昭和五十一年八月十四日条約第十一号(国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千九百七十一年七月七日にウィーンで署名された議定書)
発効日:S49,12.19

6.昭和五十一年八月十四日条約 第十二号(国際民間航空条約の改正に関する千九百六十二年九月十五日にローマで署名された議定書)
発効日:S50.9.11

7.昭和五十六年九月三日条約第十八号(国際民間航空条約第五十条(a)改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書)
発効日:S56.9.3

8.平成十年六月二十六日条約第九号(国際民間航空条約の改正に関する千九百八十年十月六日にモントリオールで署名された諸定書)
発効日:H10.6.26

9.平成十年十月十五日条約第十四号(国際民間航空条約の改正に関する千九百八十四年五月十日にモントリオールで署名された議定書)
発効日:H10.10.1

10.平成十五年六月十六日条約第四号(国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百九十年十月二十六日にモントリオールで署名された議定書)
発効日:H15.6.16

11平成十八年六月十九日条約第八号(国際民間航空条約第五十六条の改正に関する千九百八十九年十月六日にモントリオールで署名された議定書)
発効日:H18.6.19